世界の建築鉄骨を支える主要鉄鋼メーカー概要レポート

世界の鉄鋼業界は建築・建設分野において重要な役割を果たしており、特に建築鉄骨分野では高品質かつ高強度の鋼材が求められています。本レポートでは、建築鉄骨材料の製造に関わる世界的な鉄鋼メーカーについて概観し、各社の特徴や市場における位置づけを解説します。

この記事の目次

1 世界の鉄鋼業界の現状
2 世界の粗鋼生産ランキング（2023年）
3 主要鉄鋼メーカープロファイル
4 アルセロール・ミッタル（ルクセンブルク）
5 中国宝武鋼鉄集団（中国）
6 日本製鉄（日本）
7 POSCO（韓国）
8 JFEスチール（日本）
9 ニューコア（米国）
10 USスチール（米国）
11 世界的な鉄鋼業界のトレンドと課題
12 結論
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世界の鉄鋼業界の現状

2023年の世界鉄鋼業界における粗鋼生産量ランキングを見ると、中国メーカーが上位を占める中、日本を含む伝統的な鉄鋼生産国のメーカーも健闘しています。建築鉄骨分野においては、高品質・高機能鋼材の開発・供給能力が各社の競争力を左右しています。

世界の粗鋼生産ランキング（2023年）

世界鉄鋼業界の粗鋼生産量ランキングでは、中国宝武鋼鉄集団が1億3080万トンで首位を維持、アルセロール・ミッタルが6850万トンで2位、鞍鋼集団が5590万トンで3位となっています1。日本からは日本製鉄が4370万トンで4位、JFEスチールが2510万トンで13位にランクインしています1。

主要鉄鋼メーカープロファイル

アルセロール・ミッタル（ルクセンブルク）

アルセロール・ミッタルは、2006年にオランダのミッタル・スチールとルクセンブルクのアルセロールが経営統合して誕生した、世界最大級の鉄鋼メーカーです5。年間粗鋼生産量は約6850万トンで、世界第2位の規模を誇ります1。

同社はルクセンブルクに本社を置き、世界60カ国以上で事業を展開しています5。建築分野においては、多様な建築構造鋼から高張力鋼板まで幅広い製品を供給し、特に自動車用鋼板にも強みを持っています。研究開発拠点をルクセンブルク、フランス、ベルギー、スペイン、アメリカ合衆国、ブラジルの6カ国に持つなど、グローバルなネットワークを活かした技術開発に注力しています5。

日本には「ArcelorMittal Japan株式会社」を設立し、東京にオフィスを構えて自動車用鋼板事業に特化しています5。

中国宝武鋼鉄集団（中国）

中国宝武鋼鉄集団は、2023年の粗鋼生産量が1億3080万トンと、世界トップの生産能力を持つ中国の国有鉄鋼メーカーです1。中国の急速な都市化と建設ブームを背景に急成長し、建築鉄骨向けの鋼材供給において重要な役割を果たしています。

その圧倒的な生産量により世界の鉄鋼市況に大きな影響力を持ち、中国の鉄鋼業界を代表する企業として国際的にも注目されています13。

日本製鉄（日本）

日本製鉄は日本最大手の鉄鋼メーカーで、粗鋼生産量は2023年に4370万トンと世界第4位にランクされています1 7。高炉メーカーとして高品質な鋼材を生産し、建築構造用鋼から高機能鋼材まで幅広い製品を提供しています。

特に高級鋼材の技術力では世界をリードしており、1000を超える国際特許を保有するなど、技術開発に強みを持っています2。2023年12月にはUSスチールの買収を発表しましたが、アメリカ側の政治的な反対により実現しませんでした10。

POSCO（韓国）

POSCOは韓国最大の鉄鋼メーカーで、2023年の粗鋼生産量は3840万トンで世界7位にランクされています1 6。1968年に浦項総合製鉄株式会社として設立され、2002年に現在の社名になりました6。

POSCOは日本の鉄鋼メーカーからの技術支援を受けて成長し、現在では世界的な競争力を持つ鉄鋼メーカーへと発展しました6。建築用鋼材も含め幅広い鋼材を製造しており、韓国の経済発展に大きく貢献しています。

JFEスチール（日本）

JFEスチールは、2003年に川崎製鉄と日本鋼管が統合して発足した日本の大手鉄鋼メーカーです9。粗鋼生産量では日本国内で日本製鉄に次いで第2位、世界では2023年に2510万トンで第13位の規模を持っています1 9。

同社の製品には、船舶や大形構造物に使用される厚板、建築・土木分野で使用されるH形鋼・鋼矢板などの形鋼や軌条、建築物に使用される棒鋼・線材などが含まれ、建築鉄骨分野において重要なサプライヤーとなっています9。

ニューコア（米国）

ニューコア・コーポレーションは、アメリカで最大の鉄鋼メーカーで、いわゆるミニミル（大規模な高炉メーカーとは対照的に、小規模電炉による高効率生産）の代表的企業です8。2023年の粗鋼生産量は2120万トンで世界15位にランクされています1。

ニューコアは建築用構造鋼の重要なサプライヤーであり、コスト効率の高い生産方式により競争力を維持しています8。同社は1988年に日本の大和工業と合弁事業を開始し、ニューコア・ヤマト・スチールカンパニーを設立するなど、国際的な展開も進めています8。

USスチール（米国）

USスチール（United States Steel Corporation）は、アメリカのペンシルベニア州ピッツバーグに本社を置く老舗の製鉄会社です10。2022年の粗鋼生産量は世界24位、アメリカ合衆国第2位のシェアを占めています10。

1901年に設立された同社は、創業時にはアメリカの鉄鋼生産の約3分の2を支配するほどの影響力を持っていました10。長い歴史を持つ伝統的な鉄鋼メーカーとして、建築分野を含む多様な産業向けに鋼材を供給しています。

世界的な鉄鋼業界のトレンドと課題

世界の鉄鋼業界は、中国メーカーの急速な成長により競争が激化しています。特に中国宝武鋼鉄集団の粗鋼生産量は1億トンを超えており、その存在感が際立っています13。中国勢はトップ10内に複数ランクインしており、世界の鉄鋼市況は中国企業の動向に大きく左右される状況となっています13。

一方で、日本製鉄やアルセロール・ミッタルなどの伝統的な鉄鋼メーカーは、高品質・高機能の鋼材開発に注力し、技術力を強みに競争力を維持しています。特に建築分野においては、耐震性や高強度を兼ね備えた鋼材の開発が進められています。

結論

建築鉄骨分野を支える世界的な鉄鋼メーカーは、それぞれ独自の強みと戦略を持ちながら市場で競争しています。中国の大手メーカーが生産量で圧倒的な存在感を示す一方、日本や欧米の伝統的メーカーは高品質・高機能鋼材での技術力を強みにしています。

今後の建築鉄骨市場においては、環境負荷の低減や軽量・高強度化といった技術革新がさらに重要になると考えられます。各社の動向を注視しながら、建築鉄骨分野における最適な材料選定や調達戦略の構築が求められています。